焼き魚の読書ブログ

まだ120冊しか小説読んだことない。焼き魚の読書ブログ

『わたしの幸せな結婚』酷評レビューしてみた。

3年前に小説家になろうから書籍化され、今や累計200万部を超える大ヒット作になった『わたしの幸せな結婚』。
Amazonのレビュー件数は現在1000件を超え、平均評価は4,6と恐ろしく高評価である。
最初本作のAmazonの商品ページを見た時、とんでもないレビュー件数と平均評価に面食らい、余程の傑作なのか!?とわくわくしながら注文して読んでみたが⋯⋯

正直、高評価と絶賛レビューに騙された気分だった。
薄っぺらいキャラクター、強引な心変わり、都合良すぎる展開をつぎはぎにしたお粗末なストーリー構成、あまりにも整合性の取れていない設定⋯⋯なんだこれ。何もかも素人丸出しだ。いや、なろうの素人小説の中でもかなり下手なほう。これ、面白いか? 面白さは人それぞれだが、正直いって話の中身が酷すぎてとても面白いとは思えない。
こんならケータイ小説読んでたほうがましだわとしか思えなかった。
わた婚をネットで検索してみると、どこもかしこも高評価ばかり。ほとんどの人が批判をせず、絶賛してばかり。目眩がした。低評価はあっても一つか二つくらいしかない。
いや、ちょっと待ってよ。明らかに作品の中身と評価が解離しすぎだろうよ。
なぜこの程度の作品が200万部も売れて、批判がほとんどなく、各所から絶賛されているのかわからない。
今まで物語自体にあまり触れたことがないライト層が絶賛しているのだろうか? にしてもこの評価はあまりにも異常で(悪寒で)鳥肌が立つ。
誰も批判していないので、せめて私だけはと思い読んでて違和感を覚えた、明らかに変だろと思った部分についてAmazonで徹底的に酷評してみた。

結果、400人もの参考になった人数が集まり、少しすっきり。批判がめったにない中、共感してくれた人がたくさんいたのは嬉しかった。
そのAmazonに載せたレビューをここにも載せようと思う。

文字数は1万2千字くらい。かなりの長文になります。

Amazonレビューの原文→
https://www.amazon.co.jp/gp/aw/review/4040730194/R3NG4DNEL07EL0?ref=pf_vv_at_pdctrvw_srp

(レビューの日付が新しいのは再投稿したからです。本文自体は11月に書きました)

↓以下、私が書いたAmazonの酷評レビュー

普段から小説を読まないライト層、Web版の読者から支持されているのでしょうか?
評価があまりにも高く期待して購入しましたが、個人的には買って損しました。
レビュー数百件で平均評価4.6とは凄い、余程の傑作なのかと思いましたが、全くそんなことはありませんでした。
まだ一巻目でこんな感想を書くのはあれかもしれませんが、書かせて頂きます。

ラストまでのネタバレを含みますので初見の方はご注意ください。

とにかく話の中身がスカスカで薄っぺらく感じました。
突っ込み所も挙げるとキリがありません。

ストーリーの流れはこんな感じ。生まれつき異能力が無くて虐げられていた主人公が斎森家から捨てられて久堂家へ嫁ぎ、今まで使用人扱いされていたことから嫁としてするべきことがわからず、妻って何をすればいいの?という疑問から、旦那に料理を作る。そして旦那のイケメン君から飯に毒を入れたなと疑惑を持たれ、晴れて、ご飯うまいよと褒められ、見初められ、美世が少しずつ幸せになっていく物語がはじまる⋯⋯。
話の流れだけを見るととっても魅力的で素敵なお話。でも読んでみるとシンデレラならぬ陳腐な『陳デレラ』といった感じでした。

あらすじに日々料理を作るうちにイケメン君と心を通わせていくとありますが、料理云々はp60のご飯を褒められた辺りで終了します。物語全体の中で、料理を作りながらイケメン君と触れあっていくのかと思いましたが、残念ながら最初にご飯を作ってあげるシーンで料理による交流は終わりです。なので『日々料理を作りながら心を通わせていく』という過程は皆無です。ちょっとあらすじ詐欺に感じました⋯⋯。

久堂家に嫁いだ後、美世は使用人のゆり江の料理を手伝い、イケメン君たちに朝飯を作ってあげます。しかし、イケメン君は毒殺を恐れて美世に先に食べてみろと言い、彼女が食べなかったことでお前毒か何かを盛ったんだなと疑って、朝飯抜きで出勤してしまいます。
イケメン君は、斎森家は地位が高く久堂家の権力を狙ってくる可能性があり、美世が当主である自分を毒殺するかもしれないと思って警戒しました。異能家の当主は命を狙われることがあるらしく、当主のイケメン君にも殺害の危機は常にあることなのでしょう。

この毒殺疑惑展開からイケメン君の警戒心がブレて美世に謝罪するまでの過程のロジックが色々と都合いいなと感じました。
ゆり江はイケメン君に「毒を入れただなんてあなたなんてことを言うんですか!私は美世さんが料理を手伝ってくれて嬉しかったです!美世さんは今まで久堂家に嫁いで来た無礼な女とは違い優しく態度も良く、私を気遣ってくれたし、だから毒を入れるような人とは思えません」と説得します。
ゆり江は、二十七歳のイケメン君が子供の時からずっと久堂家に務めており、彼とは親密な仲です。
ゆり江さんよ、当主がいつ誰によって殺害されるかわからない場所に長いこと務めておきながら、まだ嫁いできて三日も経っていない美世の態度など表面的な部分のみを見て純粋に彼女は『悪い人ではない』と信じるとはさすがに警戒心なさ過ぎませんか。
暗殺など誰かに頼まれする殺害は、失敗し尋問されて情報を吐き出しちゃえば命じた側にも迷惑を被るし、すぐバレるようなヘタレには任せないと思います。当主が他家からの殺害危機に晒されている立場なら、イケメン君たちも殺す側が非常に巧妙な手口を使ってくることを警戒しているはず。ゆり江も細心の注意を常に払うべきでは? と思いますが。
それにゆり江さん、イケメン君と長い付き合いで親密な仲なのに、彼が当主の立場ゆえ殺害されることを警戒する質だと知らないというのはなんかおかしくないですかね?

イケメン君も毒殺を警戒しているのなら、ゆり江に「あいつに飯を作らせるなんてとんでもない!万が一毒ぶっこまれてたらどうすんねん。お前不用心すぎ!」となぜ叱らないのでしょうか。あと、事前にゆり江に「斎森の女だから警戒しろ」と念を押したりしなかったのでしょうか。

そして一番の問題はイケメン君。彼の警戒心は上記したゆり江の『美世が今まで嫁いできた女たちとは違い優しくて態度がいい感じ=毒を入れるような人とは思えない』と安直に結び付けてしまう単純思考すぎる説得や、居間にいた美世の顔が泣きそうに見えたという上っ面だけの理由であっさりぶれます。心がブレたイケメン君は「確かに美世は今まで嫁いできた女とは何か違う。暫く彼女の様子を見るか」と考え直します。

美世がイケメン君に先に食べてみろと言われ、朝ご飯を食べられず焦るというわかりやすい行動を堂々と取ったことで、自分を本気で殺すつもりならor殺害する術に長けている者ならあんな素人臭いヌルい真似はしないはずだ、と思って警戒心が緩んだならまだ納得できます。が、美世は今までの女とはどこか違うって気にする点そっちなのかよ(笑)もっと他に着目するべき点があるでしょうよ。

帰宅した頃までは「様子を見よう」とまだ警戒心を抱いていたイケメン君ですが、次の場面で美世がすみませんでしたと必死に謝るのを見て『まるでこちらが謝罪を強要しているようで居心地が悪い』『弱いものいじめをしているような気分だ』となぜか即行罪悪感に囚われます。
居心地が悪いとか弱いものいじめをしているような云々の心理描写は「美世は悪くないのに」という気持ちがないとできないような思考ではないでしょうか? まだ警戒心を抱いているなら、そうやって必死に謝ってこちらを油断させようとしているのか? と疑うような気もしますし。
美世が毒殺など企んでいなかったという確証を得て疑いが完全に晴れた後、自分のほうが間違っていたのだと反省し、美世が必死に謝る姿を見て『あんたは悪くないのにそんな必死に謝られたら、まるでこっちが謝罪を強要しているようで居心地が悪い。弱いものいじめをしているような気分になる』という流れなら不自然さは感じられなかったと思います。
「様子を見るか」と思って美世を暫く観察する、または物的証拠を確保するなど警戒心を浄化する過程を経ずに、謝る姿を見ただけで純粋に罪悪感を覚えるのは唐突だなと感じました。

さらにイケメン君は美世に「冷たい言い方をしてごめん」「本気で疑っていたわけじゃない」「また明日朝飯を作ってくれ」と謝罪するし、『居心地悪い&弱い者いじめをしているよう』という思考も相まってもうこの時点で警戒心が99%くらい解消されて反省しちまったような気がして、この人も結局見た目で純粋に人を判断して心変わりしてしまうなんて軽すぎるし無能かよと思いました。
美世の謝る姿を見ていて居心地が悪い、こちらが弱い者いじめをしているようだと思い謝罪したのはイケメン君の心が優しいから、ではなく単に都合のいいザル頭なだけだからだと思いました。
イケメン君が朝食をトンズラしたことで残され冷たくなった美世作の朝飯が登場しますが、それの中身を検証することすらしないまま毒殺騒動はあっさりと終了です。
こうして、一歩間違えれば命に関わる問題なのにイケメン君も美世の表面的なところのみを見てコロッと心変わりしてしまいました。

「こちらとしては警戒し、警告したまでのこと」という文がありましたが、毒殺を警戒したシーンは警告するための演技だったというわけではなく警戒と警告を二で割って威嚇行為のようなものだったと解釈していますが、それでも警戒していたのなら気持ちの切り替えがあまりにも早すぎるし単純すぎる。

ゆり江の説得、美世の顔が泣きそうだったという理由がイケメン君の警戒心を揺るがし謝罪したい気持ちにさせるほどの強力な威力になっていないので説得力がなく、毒殺疑惑解消までの流れが都合いいなと思いました。
殺害を警戒している設定なのに言動や思考は警戒が薄いという矛盾を感じずにはいられません。
とにかく毒殺という命に関わる問題に対し、イケメン君もゆり江も不用心過ぎると思います。

毒殺云々の展開以降から段々と都合の良い展開が目立つようになって読む手が何度も止まってしまい、中盤以降はずっと苦笑しながら読んでました。

続く一巻最高の感動シーンと言われているイケメン君にご飯を褒められて美世が泣く展開で、違和感を感じてしまったことがあります。
褒められるシーンに「こうして誰かに認められて、褒められるのは何年ぶりだろう」という美世の台詞が出てきます。この言葉の裏を返せば、美世は何年も誰からも認められたり褒められた経験がないということでしょう。でも、ちょっと待って。彼女には心を許している理解者の幼なじみの幸次がいます。幸次は何度も美世の置かれた状況を改善しようと試みたり、庇ったり、現在に至るまで気軽に話相手をしてくれています。美世もそんな心優しい幸次を良き理解者と評しています。
それなのに美世ちゃんよ、幸次は何年も自分を認めてくれなかったというのですか? 幸次は美世を一人の人間として尊重し認めていたからこそ数々の優しい対応をしてくれたのだと思いますが、美世としては認められているという認識のうちに入らないのですか?
美世も幸次を理解者だとか味方だとか思っていることから彼を『自分を認めてくれている人』と認識しているようですが、違うのですか?
というわけで、何年ぶりかに認められたわ〜と泣く美世に対し、あれ、幸次っていうあんたを認めてくれている優しい人いたよね? 美世も、幸次は自分の味方をしてくれていると思っていたよね? イケメン君の優しい対応には「自分を肯定してくれた」と思ったのに、幸次は論外なの? と突っ込んでしまいました。
この場面で幸次の存在が忘れられているor省かれているような気がします。
あと、幸次は褒めてくれたこともなかったのでしょうか。褒めてくれたことがあったかどうかについては書かれていませんが、理解者である幸次が美世を褒めたことはほとんど無かったという話も不自然に感じます。

齋森家の使用人たちも美世を認めてくれたり、褒めてくれたことはなかったのでしょうか? 使用人たちは美世といじめてくる毒妹の香耶が顔を合わせて面倒が起きないよう配慮してくれたりと良き関係を築けています。美世をどうでもよく思っているなら配慮なんかしてくれないと思います。これなら香耶たちに見つからないところで彼らから一度でも美世を肯定してくれる言葉や褒め言葉を言われてもおかしくはない気もしますけど。美世さんは辛いのにいつも頑張っているね、偉いよとか使用人たちは何年も一言も言ってくれなかったのでしょうか?
美世が久しぶりに認められ、褒められたって言うならそうなんだろ! と言われるかもしれませんが、私は腑に落ちません。
美世を庇ったり助けようとしてくれた良き理解者がいる、使用人たちとの関係は良好、彼らとは数年間くらいの付き合いということから、イケメン君が美世を久しぶりに認め褒めてくれたということに説得力がなく、褒められて感極まった美世の気持ちに付いていけずモヤモヤとするだけでした。
今まで幸次から素っ気なくされ使用人たちからも冷たくされていて完全に孤立無援だったけれど、久堂家に来てから生まれて初めて一人の人間として尊重され肯定されたという流れだったなら環境変化に深い落差があり、心にグッと来たかもしれません。

あとイケメン君、ご飯を褒められて号泣した彼女の涙を見て「自分の何気ない言葉で流したあの涙は演技ではないと確信した」と感じましたけど、前頁で『まるでこちらが謝罪を強要しているような、弱いものいじめをしているような気分だ』という思いに駆られ謝罪までして、堂々と再度の朝飯を食っておきながらまだ美世のことを疑っていたのかよと更に違和感を感じて感動など微塵にも出来ませんでした。
涙を流す前までまだ美世を疑っていたなら、上記したようになぜ彼女が必死に謝りまくる姿も自分を油断させるための演技なのでは思わなかったり、冷めた朝飯の検証をしなかったのかと疑問です。
というわけでせっかくの感動シーンも???が頭に浮かびまくるまま終了になってしまいました。

ご飯を褒めた後、美世とイケメン君はデートします。
イケメン君、当主ゆえ殺害されることを警戒しているのに真っ昼間から平然と顔を晒してデートしても大丈夫なんですか? 殺害してくる相手はイケメン君の顔を覚えていると思うので、昼間に顔を思いっきり晒せば格好の的になると思いますが。
あと、狙ってくるのは恐らく異能家や異形の存在でしょうから、遠距離からご飯に毒を盛られたり攻撃されたりすることは警戒しないんですか。ファンタジー能力・術のある世界なので殺害方法も他殺を自殺や事故に見せかけることは充分できるでしょうし、危機感をもたずにイチャコラして大丈夫なんですか。キャラの言動が甘いと感じました。

そしてイケメン君は十日ほど美世と同じ屋根の下で過ごしちょっとデートしただけで「私達はこのままいけば結婚できる仲だ」といきなり判断してしまいます。デート後も、特に納得のいく強烈な理由もなしにイケメン君はなぜか美世にベタベタと惚れまくりです。

イケメン君が美世に心を寄せた理由として、1つ目に美世が今までの嫁とは雰囲気、仕草、性格が違い、健気で優しい女の子であまり嫌悪感がない。二つ目、美世がイケメン君にご飯を旨いよと褒められて「褒められるのは初めてで」と泣いたことから、彼女がどんな環境で育ってきたのか気になった。三つ目、美世の仕草や振る舞いが結婚相手を意識しているから好感を持てたというのがあると思います。
美世に興味を持った、振る舞いに好感を持ったのは彼女に心を寄せていくきっかけでしかないと思います。ベタ惚れに至る強烈な動力にはならないと思います。
ベタ惚れに至るまでの過程を、あらすじにあった日々料理を作り触れあっていくシーンなどを設けて丁寧に描いて欲しかったし、そのほうが多少ご都合主義があったとしても説得力はありました。

美世と会って数日で、友情やら恋愛感情やらもまだそんなに育まれていない、お互いを知り合う馴れ初めの初デートの段階で「私達はこのまま行けば結婚できる仲だ」といきなり判断してしまうイケメン君、相当ヤバい人だと感じてしまいました。
たった十日の中(ご飯を褒めた展開からデート展開までの書かれなかった日々を含め)で、イケメン君が美世とはこのまま行けば結婚できる仲と判断したっぽい理由が『美世の振る舞いや気遣いが他の婚約者のような無礼さがなく、結婚相手に相応しい感じで気に入った』という軽いもの意外に特になかったので説得力がなく、おいおい早ええよと引いてしまいました。振る舞いや態度意外の中身の部分ももっと知るべきじゃない? と思いました。
美世を気に入ってから、もっともっとお互いを深く知り合った段階で一生を共にしようと考えるのなら、不自然ではないと思います(あくまで私の感覚ですよ)

その上「このまま行けば〜」とイケメン君が思うタイミングも唐突に感じました。
イケメン君、デート前のご飯を褒めた場面では「美世とはどんな娘か?」と模索していてかつもんやりと「結婚相手とするには良い娘だなぁ、好感が持てるなぁ、気に入ったかも」くらいに思っていて、まだ美世を表面的にしか知らない、深く踏み込んでいない様子見の段階だったのに、なんだこの急な変わり様は。

いつの間にイケメン君の中で美世との関係は「このまま行けば結婚できる仲」に昇格していたんだよ! 

仲って、友達などある種の絆が出来ているということなんじゃないですか? いつ二人の間に『仲』と呼べるほどの絆が出来上がっていたのですか?
ご飯を褒めてからデートの間までの書かれなかった日々でもしかすると仲良し度が上がっていたのかもしれませんが、書いてくれないと説得力がありません。
それとももしかして数時間?ほどデートした中で「あ、俺達このまま行けば結婚できる仲だわー」と判断してしまったのでしょうか。だとしても早すぎるし浅すぎる。

実はイケメン君が自分の嫁に相応しい女かどうか試していて見事美世が合格してこいつを嫁にしようと思ったとか、美世を逃せば家が没落してしまうので焦っているなどの理由があれば、美世にベタ惚れしたわけにもう少し納得できたのですが。

不器用な二人の初々しい純愛、と多くのレビューに書かれていますが、私が読む限りイケメン君から一方的に美世に踏み込んでいくような感じで、青春恋愛のような青臭さも甘酸っぱさもない。全体的にイケメン君の不自然な甘さが目立って個人的に胸キュンはできませんでした。思っていたのとだいぶ違いましたね。

堅物で冷酷な性格のイケメン君のツンデレ心が美世の可愛さと健気さで徐々に解凍されて、彼がデレモードに移行していく萌え所たっぷりな過程を読みたかったのに、何だよ、イケメン君がセルフで解凍していくのかよとがっかりです。
よくあるご都合溺愛系俺様イケメンと変わりないじゃないですか。
失礼な言い方ですが、チョロインならぬチョロー感が拭えません。
毒殺云々辺りからキャラがぶれて、デートシーンではさらにキャラがぶれまくりな気がします。

美世の口数少ない、感情に乏しい、一切笑わないキャラは上手く書けていたと思いますが、イケメン君のキャラはとにかく薄っぺらい。残念です。
見た目は滅茶苦茶カッコいいけど中身は空洞ですね。

そしてデート後の展開でもイケメン君は美世に「出て行かれては困る!もうすぐ婚約の儀をする予定なのだから!」とか「死ぬまでここ(俺ん家)にいろ!」とか言うなど、よくわからないけれど婚約を決意してしまうほどベタベタに惚れまくりです。
デート展開から『出ていかれては困る』と言われる展開の間にイケメン君ががっつり美世にベタ惚れするに至る劇的な展開があったわけでもありません。なのでなぜそこまで美世をがっつりと好きになったのか疑問です。
美世を絶対手放したくないほどにどっぷり惚れた理由が全体的に曖昧でふわっとしすぎていて、イケメン君なぜそんなに美世を好きになったしという疑問が溢れるばかりで感動など微塵にもできません。イケメン君が美世に優しくする場面で本来ならイケメン君優しいなぁ(涙)となるべきなのでしょうけれど「こいつ色々と都合いいなぁ(笑)」と苦笑してしまいました。

まぁ、溺愛設定という妄想要素にベタ惚れした理由を求めてはいけないのかもしれませんが、各レビューの「心理描写が上手い」とか「緻密な心理描写」とかいう前評判の影響で溺愛の理由にリアリティや納得の行く成り行きを求めてしまったせいでこんな意見になってしまいました。

このデートで、美世がイケメン君から優しくされて初めて「愛しい」という感情を覚えます。
序盤一幕目の追放からの救済、中盤二幕目の感情の気づき、とストーリー構成に重要な三転幕はとりあえず出来ているのかなーと思いました。 
終盤辺りまで主人公のキャラだけは上手く書けていたと思います。
しかし、感情の気づき以降に来る、主人公の飛躍というか自己成長というか、感情の気づきから何かを得て主人公自ら行動に移り出し成長していく段階が無いです。そして成長過程を経ずに、終盤の3幕目で主人公が急成長してしまい、大いにズッコケてしまった感じです。主人公の急成長については後に触れます。

次に、悪夢にうなされる美世に異能力の何かが貼り付いているのをイケメン君が見るシーンありますけど、最強と言われる久堂家のセキュリティー低すぎませんか(笑) 他の異能力が及ばないよう結界貼るとかしてないのかな。
もし悪夢の原因が他者の異能力なら、久堂家のガバガバセキュリティを改善すれば美世が悪夢に苛まれることもなかったとか?と勝手に推測しました。
美世に張り付いていた奴は何者だ? と疑う前にまず自分の家のザルさを疑いましょうよ。
屋敷もザルで当主もザルで大丈夫か久堂家。

そして悪役サイドもイケメン君並みに頭の中身がスカスカです。
p90ページ辺りで、無能の美世が実母から受け継いだ可能性があるという最強の異能力『薄刃』の開花と継承を狙い、幸次の父が美世を欲しがるシーンがあります。
薄刃は凄まじい攻撃力を誇る最強能力で、能力の持ち主は国に迷惑がかからないよう身を潜めてひっそり暮らしているのだそうです。勿論そのため薄刃は戦闘では実用化されていません。
この薄刃という異能力、威力的にとても危険で戦闘にも役に立たない使えねーやつにも関わらず、なぜ斎森家は引き継ごうとしたのでしょうか?
国家危機をもたらす能力を名家が引き継いだら、世間から非難轟々になると思うけれどね? そして齋森家の子孫が途絶える原因にもなりかねないと思います。薄刃の力を引き継いだ子供が生まれたとしても、国家危機をもたらす厄介な存在と一体誰が結婚したがるでしょうか?
薄刃は戦闘で実用化もされていないし、国から薄刃能力者たちに多額の助成金が出されているということもないし、更に威力は国家に迷惑をかけるレベル(異形討伐どころか人災を引き起こす感じ?)だし、万が一発動したら責任は引き継いた異能家やその能力者に降りかかるだろうし、継承したところで何の得もない気がします。
デメリット99%しかないでしょう。
わざわざ不利益を被るような自殺行為をしているだけのような気がします。
というわけで薄刃の家との政略結婚にはデメリットしかないと思います。
「薄刃家との政略結婚は例外だった」という説明があったので、もしかすると2巻以降でリスクを犯してでもどうしても斎森家と薄刃家が政略結婚をしなければならなかった必須の理由が明かされるのかもしれませんが、幸次のお父さんの件については別。彼の薄刃を狙う目的は自家没落防止のため最強の能力が欲しいというものですが、既に書いたとおり薄刃を継承すること自体がほとんどメリットが無いように感じます。
なので幸次のお父さんの考えが「俺ん家没落しそうだから薄刃とかいうTUEEEチート能力欲しいんだよね。そんで最強無双なろう主人公みたいなTUEEEE子孫生まれたらチョーラッキー(ただし薄刃の使い道や後先のことは頭に無し)」という浅くて幼稚臭い感が凄く、彼がただのアホーなオッサンにしか感じられません。目的の中身がスカスカなのです。
幸次のお父さんが美世を欲しなければ終盤の事件が発生しないとはいえ、後先のことを何も考えずに最強能力欲しーわと思い行動に移るのは都合良いなと思いました。というかもう本作はほとんど都合の良い展開をツギハギにして進む感じですけどね。

続いてイケメン君の同僚、五道と会話する、美世が彼と初めて会うくだりは無駄だと思いました。2巻に続く伏線でもなさそうだし、1巻目で五道を活かせていないし、正直五道をなぜ登場させたの? と思いました。 
この無駄な部分を省いて、美世がイケメン君から優しくされて多少なり自己肯定感を得て、自分にはもう良き居場所があるから辛い過去と決別しようと思い始めるなどする成長への第一歩を踏み出す土台のシーンを書けておけば、第三幕目での不自然な急成長は防げたのではないかと思います。

デートの次に美世は香耶になじられて卑屈になって泣いたり、幼なじみの幸次のお父さんに連れ去られたりします。200ページ近くまで来て、ようやく小さな事件が起きます。遅すぎ。
香耶はイケメン君を手に入れるために婚約者を交換しようと美世に持ちかけ、その後幸次のお父さんの美世の薄刃の力を自家へ継承させる策略を手伝います。香耶がイケメン君を欲する理由が「私のほうがイケメン君の嫁に相応しいから」ってこいつも頭の中身がペラッペラです。
しかし香耶も幸次のお父さんも、頭が悪すぎます。香耶、美世とイケメン君が仲良しな状態で彼女を引き離そうとすれば、そりゃイケメン君何しやがる!と取り返しにくるだろ(笑) まんまと逆襲されるわけだよ。どうして幸次のお父さんもそんなことがわからなかったのか。アホすぎ。幸次も美世を庇い味方していて手を出せば邪魔してくるだろうに、なぜ事前の対策を取らなかったのか。
美世とイケメン君の仲を引き裂く工作をして、美世に対する信頼を損なわせ、あんな子より私のほうがいいわよ?と自分の良さをアピールしイケメン君に接近する展開とかなら、彼も葛藤するだろうし、幸次がイケメン君に「一緒に美世を助けに行こう!」と誘うのも防止できたし、ストーリー的にもっと面白かったし、香耶の狂気的なキャラがより引き立ったと思います。
それとも、香耶を「イケメン君は私の夫にふさわしい、だから婚約するなら私のほうが良いのよ!」という感情をただ一方的にぶつけるだけの幼稚で小物感満載な薄っぺらい女として書きたかっただけでしょうか?

そしてようやく来ました、美世の急成長シーン。香耶に捕まった後、美世は生まれて始めて彼女に対してぶちギレます。今まで自分を虐げていた妹に対し反抗する見所シーンですが⋯⋯ちょっと待ってください。つい数十ページ前まで美世は香耶になじられて卑屈になって、泣いていたんですよ? それに香耶は異能力を持っているのに、反抗すれば殺されるとなぜ美世は危惧しなかったのか。手ぶらで魔物に立ち向かうようなものです。

つい最近まで香耶にいじめられて泣いて私なんかと卑屈になるほど脆弱だった美世が、幼少期から自分を虐げ一切抵抗できずかつ異能力を持つ香耶に反抗できるほどにいきなりメンタル強化されちゃって、凄く違和感がありました。私なんかと卑屈になった後、主人公のメンタルが香耶に反抗できるチートレベルにまで強化されていく過程が一切なかったので不自然でした。急に美世の弱腰なキャラが変わってしまってますます拍子抜けです。
今まで受動→受動→受動の展開が連続し、受動的展開を自分の精神に取り込み主人公自ら能動的にメンタル変化する過程もなかったので、今まで抵抗すらできなかった毒妹に反抗するという心理的にとてつもなく高いハードルをいきなり飛び越えてしまう能動的展開が来てびっくりです。
走り幅跳びで助走無しでいきなり十メートル以上飛べてしまったかのようなおかしさを感じずにはいられませんでした。
仮に『決意の反抗』ではなく死を覚悟の上での『決死の反抗』を冥土の土産にするにしても、やはりメンタル強化過程は必要だと思います。

イケメン君もゆり江も私に優しくしてくれたという、美世のメンタル強化のわけを匂わす文章がありますが、もしかして二人から優しくされただけでメンタル強化できたのですか。優しくされてからもいじめられて泣いていたのに?
確かにデート終わり辺りで香耶に泣かされた後、美世がイケメン君に過去の出来事を打ち明け、彼に慰められて「死ぬまでここにいろ!」と言われるシーンがありますが、ここでメンタル強化されたのでしょうか? あとは追放されて何年も会っていなかった使用人の花との再会とかも影響があったのでしょうか? とにかく美世のメンタル強化された理由が非常に曖昧、かつ無理があるような気がします。
誰かから優しくされてもそれはほんの気休めに過ぎず、自己肯定感を多少得られたとしてもチートレベルの急激なメンタル強化には至らないと思います。
況して幼少期(人格形成に多大な影響を及ぼす時期で、虐待を受けると脳にも心にも致命的なダメージを受けて生涯苦しむ可能性が高い)から虐待されて今まで一切逆らえず、学習的無力感に陥っているために「私なんか⋯⋯」と泣かされた毒妹相手に反抗できるようになるには、長い時間をかけて「この人には逆らえない」という洗脳を解いてからでないと無理ではないでしょうか。
よくある毒親育ち、虐待親育ちブログを読んでいると、理解のある人たちに出会えても親から受けた洗脳をずっと解けずに苦しんでいるという人々は多いです。それだけ、毒家族から生来より受けた洗脳を解くのは困難です。
でも美世はたった数日間で特に説得力のある理由も成長過程も無しに学習的無力感の洗脳から開放され、人生最大のトラウマ対象で彼女にとってはラスボス級と思われる毒妹に反抗できるようになってしまった。凄いですねw

まさか、イケメン君の溺愛の力で美世の脆弱メンタルがチート化されたとか? それだとあまりにも陳腐すぎるし、都合良すぎるどころかもはやギャグですね。

「西の魔女がしんだ」や「十二国記」の主人公は最初脆弱キャラですが、様々な体験を経て自ら成長してメンタル強化されていきます。2作とも主人公の変わっていく過程を息を呑むほど緻密に自然な流れで書いていますが、本作にはまるでそれがない。美世もイケメン君も都合よく唐突にキャラが変わり過ぎている。

作者様が心理描写を丁寧に書こうとしているのは伝わってきますが、キャラの言動の整合性、説得性、心情変化の書き方が甘すぎます。作者の都合のいいようにキャラクターの心理描写が書かれている感じで、どのキャラも操り人形感が否めません。
レビューの多くに「緻密な心理描写」と評価されていたのでそれが高評価の理由の一つかと思っていましたが、読み終わった後は正直どこが緻密ですか? と言いたくなりました。
個人的に緻密な心理描写というのは、森絵都島本理生レベルですね。この作品は二人には遠く及びませんね。
プロ作家の本を読んでいると、ページの細部にキャラが変化していく仕掛けが読者に悟られないレベルでかつ緻密に違和感なく散りばめられているのを感じますが、本作には計算され尽くした細かい仕掛けなど無く都合のいい展開を溶接して都合よく進んでいく感じです。全体的に素人クオリティです。そういう意味も込めて私は本作を「素人小説」と呼びます。

不幸なヒロインが少しずつ幸せを知っていく、人間らしい感情を取り戻していく、成長するなど心の変化を重点に置いた話なら、心理描写やキャラクターの変化にはそれなりの説得力やリアリティーは欲しいところです。心理描写は人間の心を書いたものなので、臨場感がないとキャラクターが薄っぺらくなってしまいます。

毒殺騒動は人を見た目で判断しただけであっさり解決し、
長年美世を守ってくれた理解者がいたにも関わらずなぜかイケメン君が久しぶりに美世を認めてくれたということになり、
一方的にイケメン君は主人公を溺愛し、
メリットのなさ過ぎる技を異常に継承したがる&イケメン君は自分に相応しいから婚約者を交換しようとするなど敵キャラは頭が悪すぎで、
美世は急激にメンタル強化されて、
もう都合の良い展開のごり押しで話は進みます。

全体的に都合の良い展開で場面繋ぎをしている感じがあり、ストーリーのツギハギ感が否めません。
しかも話の転機となる重大なシーン(毒殺疑惑が晴れる過程、主人公の毒妹への反抗など)で個人的に色々コケている、無理矢理感が多い感じで度々萎えました。
とにかく最初から最後まで内容がペラッペラでびっくりです。

それでも、P30くらいまでは滅茶苦茶引き込まれたのは確かです。P30までのクオリティをラストまで維持できたなら間違いなく★5でした。P30までは本当に上手かったのです。でもその後がかなり残念で、全て台無しに感じました。

和風シンデレラ、不幸な少女がイケメンに見初められて幸せになるという話はとても好みだったのですが、中身の作り込みが甘すぎて残念ながらつまらなかったです。どれだけ好みでも、クオリティが低いのでは意味がありません。

この作品で一番重要そうな『結婚』の設定も全く活かし切れていません。『幸せな結婚』とタイトルにあるのに、私が読んだ限りでは別に結婚なんかしてなくてもイケメン君からは溺愛されラブラブだし、結婚自体が美世の心を癒やすわけでも、美世たちの生活を邪魔する者たちから守り手助けする武器になるというわけでもなさそう。   
結婚したことで家と家の繋がり出来て美世を守り幸せにする仲間や展開が増えていくわけでもなさそうです。斎森家や幸次の家とは一巻最後まで和解出来ていないし(今後、あの何の掘り下げもない絵に描いたような薄っぺらい悪役が安易に改心したら萎えますね)。
結婚してから物語が大きく動き出し、色んなキャラクターを巻き込んでストーリーが紡がれていくという導入や伏線は一切ありませんでしたので。
結婚という設定の重要性が全く感じられません。
結婚を期に美世の薄刃の力が開花して、敵役たちが主人公を襲ってきてイケメン君が彼らとバトルする話とかだったら活かさせていたかもな、と思いました。

この作品がとんでもなく高評価なのは、購入層の大半が元からファンの人という点、富士見書房という大手出版社が宣伝を頑張りまくったからでしょうね(この作品のコミカライズ版の広告だけ頻出してましたし)。話題になればなるほど、流行っているから、人気だからととりあえず飛びつくライト層が集まってきますし。
正直、過大評価されすぎていると思います。

驚きなのが、このシリーズが100万部も売れていることです。こんなに中身スカスカな素人小説でも出版できて、ベストセラーになれるなんて羨ましい限りです。
こういう本が大ヒットするわけは、やはり今の世の中はあまり読書をしない人が大多数だからなのでしょうか。

普段から小説を読まない方、読書初心者、コミカライズをきっかけに初めて読書体験をする方など小説に慣れ親しんでいない人やweb読者には受けるのでしょう。あとはご都合主義や突っ込み所に目を瞑れる方、頭を空っぽにし何も考えずに作品を読める方なら楽しめると思います。
たくさんの本を読んできた人には何もかも物足りないかもしれません。
あと、私のように中身の細部が気になる方は、都合の良さや突っ込み所の多さなどでストレスが溜まると思います。

色々言いたいことを書き連ねましたが、参考になれば。


レビューの本文は以上。



まさに、今世間で騒がれている活字離れ現象を現しているかのような作品だった。